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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

其三十三

姿、軋る音、今にも傾覆らんず様子に、あれあれ危し仕様はなきか、傾覆られては大事なり、止むる術もなきことか、雨さえ加わり来たりし上周囲に樹木もあらざれば、未曽有の風に基礎狭くて丈のみ高きこの塔の堪えんことのおぼつかなし、本堂さえもこれほどに動けば塔はいかばかりぞ、風を止むる呪文はきかぬか、かく恐ろしき大暴風雨に見舞いに来べき源太は見えぬか、まだ新しき出入りなりとて重々来ではかなわざる十兵衛見えぬか寛怠なり、他さえかほど気づかうに己がせし塔気にかけぬか、あれあれ危しまた撓んだわ、誰か十兵衛招びに行け、といえども天に瓦飛び板飛び、地上に砂利の舞う中を行かんというものなく、ようやく賞美の金に飽かして掃除人の七蔵爺を出しやりぬ。

其三十三

耄碌頭巾に首をつつみてその上に雨を凌がん準備の竹の皮笠引き被り、鳶子合羽に胴締めして手ごろの杖持ち、恐怖ながら烈風強雨の中を駈け抜けたる七蔵爺、ようやく十兵衛が家にいたれば、これはまた酷いこと、屋根半分はもうとうに風に奪られて見るさえ気の毒な親子三人の有様、隅の方にかたまり合うて天井より落ち来る点滴の飛沫を古筵でわずかに避け居る