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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

其二十六

馬鹿野郎め、べそをかくのか、おとなしくしなければまだ打つぞ。親分酷い。馬鹿め、やかましいわ、拳り殺すぞ。あんまり分らねえ、親分。馬鹿め、それ打つぞ。親分。馬鹿め。放して。馬鹿め。親分。馬鹿め。放して。馬鹿め。親。馬鹿め。放。馬鹿め。お。馬鹿め馬鹿め馬鹿め馬鹿め、醜態を見ろ、おとなしくなったろう、野郎我の家へ来い、やいどうした、野郎、やあこいつは死んだな、つまらなく弱い奴だな、やあい、どいつか来い、肝心の時は逃げ出して今ごろ十兵衛が周囲に蟻のように群って何の役に立つ、馬鹿ども、こっちには亡者ができかかって居るのだ、鈍遅め、水でも汲んで来て打っ注けてやれい、落ちた耳を拾って居る奴があるものか、白痴め、汲んで来たか、関うことはない、一時に手桶の水みんな面へ打つけろ、こんな野郎は脆く生きるものだ、それ占めた、清吉ッ、しっかりしろ、意地のねえ、どれどれこいつは我が背負って行ってやろう、十兵衛が肩の疵は浅かろうな、むむ、よしよし、馬鹿どもさようなら。

其二十六

源太居るかとはいり来たる鋭次を、お吉立ち上って、おお親分さま、まあまあ此方へと誘えば、ずっと通って火鉢の前に無遠慮の大胡坐かき、汲んで出さるる桜湯を半分ばかり飲み干してお吉の顔を視、面色が悪いがどうかしたか、源太はどこぞへ行った