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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
其二十五
のっそりの憎さ、生命と頼むわが親方に重々恩を被た身をもって無遠慮過ぎた十兵衛めが処置振り、あくまで親切真実の親方の顔踏みつけたる憎さも憎しどうしてくりょう。
ムム親方と十兵衛とは相撲にならぬ身分の差い、のっそり相手に争っては夜光の璧を小礫に擲つけるようなものなれば、腹は十分立たれても分別強く堪えて堪えて、誰にも彼にも欝憤を洩らさず知らさず居らるるなるべし、ええ親方は情ない、ほかの奴はともかく清吉だけには知らしてもよさそうなものを、親方と十兵衛では此方が損、我とのっそりなら損はない、よし、十兵衛め、ただ置こうやと逸りきったる鼻先思案。姉御、知らぬ中は是非がない、堪忍して下され、様子知っては憚りながらもう叱られてはおりますまい、この清吉が女郎買いの供するばかりを能の野郎か野郎でないか見ていて下され、さようならば、と後声烈しく云い捨てて格子戸がらり明けっ放し、草履もはかず後も見ず風より疾く駆け去れば、お吉今さら気遣わしくつづいて追っかけ呼びとむる二タ声三声、四声めにははや影さえも見えずなったり。
其二十五
材を釿る斧の音、板削る鉋の音、孔を鑿るやら釘打つやら丁々かちかち響き忙しく、木片は飛んで疾風に木の葉の翻えるがごとく、鋸屑舞って晴天に雪の降る