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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
其三十一
つつお浪が手中より奪いとったる腹掛けに、左の手を通さんとして顰むる顔、見るに女房の争えず、争いまけて傷をいたわり、ついに半天股引まで着せて出しける心の中、何とも口には云いがたかるべし。
十兵衛よもや来はせじと思い合うたる職人ども、ちらりほらりと辰の刻ころより来て見てびっくりする途端、精出してくるる嬉しいぞ、との一言を十兵衛から受けて皆冷汗をかきけるが、これより一同励み勤め昨日に変る身のこなし、一をきいては三まで働き、二と云われしには四まで動けば、のっそり片腕の用を欠いてかえって多くの腕を得つ日々工事捗取り、肩疵治るころには大抵塔もできあがりぬ。
其三十一
時は一月の末つ方、のっそり十兵衛が辛苦経営むなしからで、感応寺生雲塔いよいよものの見事に出来上り、だんだん足場を取り除けば次第次第に露わるる一階一階また一階、五重巍然と聳えしさま、金剛力士が魔軍を睥睨んで十六丈の姿を現じ坤軸動がす足ぶみして巌上に突っ立ちたるごとく、天晴れ立派に建ったるかな、あら快よき細工振りかな、希有じゃ未曽有じゃまたあるまじと為右衛門より門番までも、初手のっそりを軽しめたる