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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
其九
通り取り上げてやるべければ、よく家に帰って相談して来よ、老僧が云うべきことはこれぎりじゃによってそう心得て帰るがよいぞ、さあしかと云い渡したぞ、もはや帰ってもよい、しかし今日は老僧も閑暇で退屈なれば茶話しの相手になってしばらくいてくれ、浮世の噂なんど老衲に聞かせてくれぬか、その代り老僧も古い話しのおかしなを二ツ三ツ昨日見出したを話して聞かそう、と笑顔やさしく、朋友かなんぞのように二人をあしろうて、さて何事を云い出さるるやら。
其九
小僧がもって来し茶を上人みずから汲みたまいてすすめらるれば、二人とももったいながりて恐れ入りながら頂戴するを、そう遠慮されては言葉に角が取れいで話が丸う行かぬわ、さあ菓子も挾んではやらぬから勝手に摘んでくれ、と高坏推しやりてみずからも天目取り上げ喉を湿したまい、面白い話というも桑門の老僧らにはそうたくさんないものながら、このごろ読んだお経の中につくづくなるほどと感心したことのある、聞いてくれこういう話しじゃ、むかしある国の長者が二人の子を引きつれてうららかな天気の節に、香りのする花の咲き軟らかな草の滋って居る