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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
広野を愉快げに遊行したところ、水は大分に夏の初めゆえ涸れたれどなお清らかに流れて岸を洗うて居る大きな川に出で逢うた、その川の中には珠のような小磧やら銀のような砂でできて居る美しい洲のあったれば、長者は興に乗じて一尋ばかりの流れを無造作に飛び越え、あなたこなたを見廻せば、洲の後面の方もまた一尋ほどの流れで陸と隔てられたる別世界、まるで浮世のなまぐさい土地とは懸絶れた清浄の地であったまま独り歓び喜んで踊躍したが、渉ろうとしても渉り得ない二人の児童が羨ましがって喚び叫ぶを可憐に思い、汝たちには来ることのできぬ清浄の地であるが、さほどに来たくば渡らしてやるほどに待っていよ、見よ見よわが足下のこの磧は一々蓮華の形状をなし居る世に珍しき磧なり、わが眼の前のこの砂は一々五金の光をもてる比類まれなる砂なるぞと説き示せば、二人は遠眼にそれを見ていよいよ焦躁り渡ろうとするを、長者は徐かに制しながら、洪水の時にても根こぎになったるらしき棕櫚の樹の一尋余りなを架け渡して橋としてやったに、我が先へ汝は後にと兄弟争い鬩いだ末、兄は兄だけ力強く弟をついに投げ伏せて我意の勝を得たに誇り高ぶり、急ぎその橋を渡りかけ半途にようやく到りし時、弟は起き上りさま口惜しさに力を籠めて橋をうごかせば兄はたちまち水に落ち、苦しみ