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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
其十二
源太は聞いて冷笑い、何が汝にわかるものか、我のすることを好いとおもうていてさえくるればそれでよいのよ。
其十二
色も香もなく一言に黙っていよとやり込められて、聴かぬ気のお吉顔ふり上げ何か云い出したげなりしが、自己よりは一倍きかぬ気の夫の制するものを、押し返して何ほど云うとも機嫌を損ずることこそはあれ、口答えの甲斐は露なきを経験あって知り居れば、連れ添うものに心の奥を語り明かして相談かけざる夫を恨めしくはおもいながら、そこは怜悧の女の分別早く、何も妾が遮って女の癖に要らざる嘴を出すではなけれど、つい気にかかる仕事の話しゆえ思わず様子の聞きたくて、よけいなことも胸の狭いだけに饒舌ったわけ、と自分が真実籠めし言葉をわざとごくごく軽うしてしもうて、どこまでも夫の分別に従うよう表面を粧うも、幾らか夫の腹の底にある煩悶を殺いでやりたさよりの真実。源太もこれに角張りかかった顔をやわらげ、何ごとも皆天運じゃ、此方の了見さえ温順に和しくもっていたならまた好いことの廻って来ようと、こうおもって見ればのっそりに半口やるもかえって好い心持、世間は気次第で忌々しくも面白くもなる