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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
かげもないこの方連れ、云わば一ト足に蹴落しておしまいなさるることもなさらばできるこの方連れに、大抵ではないお情をかけて下され、御自分一人でなさりたい仕事をも分けてやろう半口乗せてくりょうと、身に浸みるほどありがたい御親切の御相談、しかもお招喚にでもなってでのことか、坐蒲団さえあげることのならぬこのようなところへわざわざおいでになってのお話し、それを無にしてもったいない、十兵衛厭でござりまするとは冥利の尽きた我儘勝手、親方様の御親切の分らぬはずはなかろうに胴欲なも無遠慮なも大方程度のあったもの、これこの妾の今着て居るのも去年の冬の取りつきに袷姿の寒げなを気の毒がられてお吉様の、縫直して着よと下されたのとは汝の眼には暎らぬか、一方ならぬ御恩を受けていながら親方様の対岸へ廻るさえあるに、それを小癪なとも恩知らずなともおっしゃらず、どこまでも弱い者を愛護うて下さるお仁慈深い御分別にも頼り縋らいで一概に厭じゃとは、たとえば真底から厭にせよ記臆のある人間の口から出せた言葉でござりまするか、親方様の手前お吉様の所思をもよくとっくりと考えて見て下され、妾はもはやこれから先どの顔さげてあつかましくお吉様のお眼にかかる