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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

な辛防せよ、よいは弁当も松に持たせてやるわ、と苦くはなけれど効験ある薬の行きとどいた意見に、汗を出して身の不始末を慚ずる正直者の清吉。

姉御、では御厄介になってすぐに仕事に突っ走ります、と鷲掴みにした手拭で額拭き拭き勝手の方に立ったかとおもえば、もうざらざらざらっと口の中へ打ち込むごとく茶漬飯五六杯、早くも食うてしまって出て来たり、さようなら行ってまいります、と肩ぐるみに頭をついと一ツ下げて煙草管を収め、壺屋の煙草入三尺帯に、さすがは気早き江戸ッ子気質、草履つっかけ門口出づる、途端に今まで黙っていたりし女は急に呼びとめて、この二三日にのっそりめに逢うたか、と石から飛んで火の出しごとく声を迸らし問いかくれば、清吉ふりむいて、逢いました逢いました、しかも昨日御殿坂で例ののっそりがひとしおのっそりと、往生した鶏のようにぐたりと首を垂れながら歩行いて居るを見かけましたが、今度こっちの棟梁の対岸に立ってのっそりの癖に及びもない望みをかけ、大丈夫ではあるものの幾らか棟梁にも姉御にも心配をさせるその面が憎くって面が憎くって堪りませねば、やいのっそりめと頭から毒を浴びせてくれましたに、あいつのことゆえ気がつかず、やいのっそりめ、のっそりめと三度めには傍へ行って大声で怒鳴ってやりましたればようやくびっくりし