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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

りょうと腹立つ様子を傍にてお吉の見る辛さ、問い慰めんと口を出せば黙っていよとやりこめられ、詮方なさに胸の中にて空しく心をいたむるばかり。源太はそれらに関いもせず夕暮方まで考え考え、ようやく思い定めやしけんつと身を起して衣服をあらため、感応寺に行き上人に見えて昨夜の始終をば隠すことなく物語りし末、一旦は私もあまりわからぬ十兵衛の答えに腹を立てしものの帰ってよくよく考うれば、たとえば私一人して立派に塔は建つるにせよ、それではせっかくお諭しを受けた甲斐なく源太がまた我欲にばかり強いようで男児らしゅうもない話し、というて十兵衛は十兵衛の思わくを滅多に捨てはすまじき様子、あれも全く自己を押えて譲れば源太も自己を押えてあれに仕事をさせ下されと譲らねばならぬ義理人情、いろいろ愚かな考えを使ってようやく案じ出したことにも十兵衛が乗らねば仕方なく、それを怒っても恨んでも是非のないわけ、はやこの上には変った分別も私には出ませぬ、ただ願うはお上人様、たとえば十兵衛一人に仰せつけられますればとて私かならず何とも思いますまいほどに、十兵衛になり私になり二人ともどもになりどうとも仰せつけられて下さりませ、御口ずからのことなれば十兵衛も私も互いに争う