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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
光景の悲しげなるところへ、十兵衛殿お宅か、と押柄に大人びた口ききながらはいり来る小坊主、高慢にちょこんと上り込み、御用あるにつきすぐと来たられべしと前後なしの棒口上。
お浪も不審、十兵衛も分らぬことに思えども辞みもならねば、はや感応寺の門くぐるさえ無益しくは考えつつも、何御用ぞと行って問えば、天地顛倒こりゃどうじゃ、夢か現か真実か、円道右に為右衛門左に朗円上人中央に坐したもうて、円道言葉おごそかに、このたび建立なるところの生雲塔の一切工事川越源太に任せられべきはずのところ、方丈思しめし寄らるることあり格別の御詮議例外の御慈悲をもって、十兵衛その方にしかとお任せ相成る、辞退の儀は決して無用なり、早々ありがたく御受け申せ、と云い渡さるるそれさえあるに、上人皺枯れたる御声にて、これ十兵衛よ、思う存分し遂げて見い、よう仕上らば嬉しいぞよ、と荷担うに余る冥加のお言葉。のっそりハッと俯伏せしまま五体を濤と動がして、十兵衛めが生命はさ、さ、さし出しまする、と云いしぎり咽塞がりて言語絶え、岑閑とせし広座敷に何をか語る呼吸の響き幽かにしてまた人の耳に徹しぬ。