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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
ことどこへ行かるる、何ほど仕事の大事じゃとて昨日の今日は疵口の合いもすまいし痛みも去るまじ、じっとしていよ身体を使うな、仔細はなけれど治癒るまでは万般要慎第一と云われたお医者様の言葉さえあるに、無理圧しして感応寺に行かるる心か、強過ぎる、たとい行ったとて働きはなるまじ、行かいでも誰が咎みょう、行かで済まぬと思わるるなら妾がちょと一ト走り、お上人様のお目にかかって三日四日の養生を直々に願うて来ましょ、お慈悲深いお上人様の御承知なされぬ気遣いない、かならず大切にせい軽挙すなとおっしゃるは知れたこと、さあ此衣を着て家に引っ籠み、せめて疵口のすっかり密着くまで沈静いていて下され、とひたすらとどめ宥め慰め、脱ぎしをとってまた被すれば、よけいな世話を焼かずとよし、腹掛け着せい、これは要らぬ、と利く右の手にて撥ね退くる。まあそう云わずと家にいて、とまた打ち被する、撥ね退くる、男は意気地女は情、言葉あらそい果てしなければさすがにのっそり少し怒って、わけの分らぬ女の分で邪魔立てするか忌々しい奴、よしよし頼まぬ一人で着る、高の知れたる蚯蚓膨れに一日なりとも仕事を休んで職人どもの上に立てるか、汝はちっとも知るまいがの、この十兵衛はおろかしくて馬鹿と常々云わるる身ゆえに職人どもが軽う見て、眼の前ではわが指揮に従い