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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
ことは忘れて讃歎すれば、円道はじめ一山の僧徒も躍りあがって歓喜び、これでこそ感応寺の五重塔なれ、あら嬉しや、我らが頼む師は当世に肩を比すべき人もなく、八宗九宗の碩徳たち虎豹鶴鷺と勝ぐれたまえる中にも絶類抜群にて、譬えば獅子王孔雀王、我らが頼むこの寺の塔も絶類抜群にて、奈良や京都はいざ知らず上野浅草芝山内、江戸にて此塔に勝るものなし、ことさら塵土に埋もれて光も放たず終るべかりし男を拾いあげられて、心の宝珠の輝きを世に発出されし師の美徳、困苦に撓まず知己に酬いてついにし遂げし十兵衛が頼もしさ、おもしろくまた美わしき奇因縁なり妙因縁なり、天のなせしか人のなせしかはたまた諸天善神の蔭にて操りたまいしか、屋を造るに巧妙なりし達膩伽尊者の噂はあれど世尊在世の御時にもかく快きことありしをいまだきかねば漢土にもきかず、いで落成の式あらば我偈を作らん文を作らん、我歌をよみ詩を作して頌せん讃せん詠ぜん記せんと、おのおの互いに語り合いしは欲のみならぬ人間の情の、やさしくもまた殊勝なるに引き替えて、測りがたきは天の心、円道為右衛門二人が計らいとしていと盛んなる落成式執行の日もほぼ定まり、その日は貴賤男女の見物をゆるし貧者に剰れる