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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

白堊館階上の例の秘密引見室である。もう夜が更けていた。電燈は極度に減光されていた。広い薄暗い室内には大統領の外にたった一人、背の高い男がヒョロリと立っているばかりであった。その男は笑い入っている大統領の安楽椅子の前に、針金のように痩せた長いからだを、さもうやうやしげに直立させていた。彼は陸軍省機密局長オブライエンであった。

オブライエンは今宵はじめてこの大統領私室への単独伺候を許されたのであるが、入って来るがいなや、大統領のこの途方もない笑い声にぶつかって、あっけにとられたのである。

「エフ、エフ、エフ、き、きみ、君は、あのジャップ・キッドという奴を見たことがあるかね。わしはさっき下の広間で、ジャップ・キッドの映画と、腹話術の人形とを見せられたのだよ。エフ、エフ、エフ、実に奇妙じゃ。日本人の猿めがウロウロキョロキョロと醜態をさらしおる。実に抱腹絶倒じゃ。エフ、エフ、エフ、ことにジャップ・キッドの人形は傑作じゃ。腹話術でキイキイと猿のような声を出しおる。あのジェンキンズという腹話術師は実に名人だね。君は見たことがあるかね」

「見ました。ジャップ・キッドの猿芝居は、あらゆる種類のものを見ております」