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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
敵機来襲
「そうです。その点もこの事件の一つの大きな特徴です。それから、あなた方はこういうことに気がつきませんか。韮崎も今度の男も、あまりに易々と自決をした。少しもねばりがなく、思い切りがよすぎるという点です。僕は何だか魂のない傀儡のように感じられるのですよ。自分の意志ではなく、何か他の強力な意力によって動かされている、全くその支配下にあって、ただ機械的に動いているという感じがするのです。そういう意味で僕はこの二人の憐れむべき人物の死因は、自殺ではなくて他殺だと考えるのですよ。その下手人は云うまでもなく、例の世紀の怪物ですよ」
望月少佐は謎のような幽かな微笑を浮べて、南博士と新一の顔をジロジロと見比べるのであった。
敵機来襲
大和航空機製作所爆破未遂事件があってから一ヶ月余りは、少なくとも表面においてはこれという出来事もなく経過した。その間にも、大東亜戦争の戦局はいよいよ危急を告げつつあった。味方は鞏固なる内線作戦に満を持し、敵は大東亜共栄圏中断と日本本土空襲を目ざして、めくら滅法の前進をつづけていた。
敵の醜き触手は非常の速度をもって法外に伸び来った。伸びるにつれて触手の根元は糸のように細まり、今にも折れるかと危ぶまれたが、その危険を無視して、脆弱な触手はいよいよ伸び、従っていよいよ脆弱性を増しつつあった。