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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
望月憲兵少佐
しかし、それについて意見を述べようとはせず、暫くすると、足音を立てぬようにして、ソッと室外に消えて行った。
望月憲兵少佐
犯罪の行われた時刻を正確にいうと、午前零時十三分であった。庭園を警戒していた憲兵が窓からの老博士の叫び声を耳にした時、素早く腕時計を見ておいたのである。
それから朝の八時まで、引きつづいて別荘内の捜索がつづけられた。憲兵の半数がそれにたずさわった。部屋という部屋の押入を開き、絨毯をめくり、壁をたたき、天井、床板の継目を調べ、手のおよぶ限りの捜索を行ったが、何等の異状をも発見することはできなかった。
上田市の警察署長が司法主任をともない、同市の外科病院長と看護婦を同車させて、自動車を別荘に乗りつけたのは、午前二時を少し過ぎたころであった。被害者が国家の重要人物であるという電話によって、署長は特に迅速な取計らいをしたのである。
五十嵐博士の負傷は、左背肩胛骨を貫き、左肺臓に達する刺傷で、兇器は刃渡り三センチの鋭い諸刃の短刃と鑑定された。傷はあやうく心臓を避けていたので、即死だけはまぬかれたが、老体でもあり、生命をとりとめ得るか否かは疑問であった。