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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

脳髄の断崖

高橋少年にとって、その日の重大秘密会議は永遠の謎であった。

脳髄の断崖

高橋少年を不思議がらせた老紳士は、会議が終ると、陸軍省の自動車によって、鄭重に自宅まで送りとどけられた。

老紳士は自動車の客席におさまると、何かブツブツひとりごとを云いながら、じっとしていられないように、しきりと身動きをした。果ては狭い車内に立ち上ろうとでもするように、幾度も腰を上げては、天井で頭を打った。自動車が急に曲った時などは、客席の床に尻餅をついたほどである。

会議室では老紳士はニヤニヤ笑っているばかりで、興奮していたのは他の六人の高官達であったが、今や老紳士自身が興奮しはじめ、まるで酔っぱらいのようにもがき狂っているのだ。狂いながらも、彼は大事そうに小脇に抱えた大きな折鞄を、決して手離さなかった。その中には余程大切なものが入っているのに相違ない。

車上の人の狂態にはお構いなく、間もなく車は麻布区××町の古い屋敷町に着いていた。そして、とある横丁の生垣に囲まれた住宅の、低い石門の前に停車した。表札には、「五十嵐東三」とある。

自動車を帰すと、老紳士は躍るような足どりで自宅の玄関に辿りついた。