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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

二重の地下室

その間、表面にはこれという出来事もなかったけれど、敵国間諜団の捜査については、憲兵隊は勿論、父と母との二重の仇討を念願する新一青年も亦あらゆる努力をつづけておったのである。

ある夜のこと、目黒区の望月少佐の住居へ新一から電話がかかって来た。少佐と新一とは二十日以上も顔を合せていなかったところへ、実に突然の電話だったのである。しかもその用件は、「非常に重大な報告をもたらして今直ぐお伺いする」というのであった。

暫くすると、いつもの国民服姿の新一が望月邸を訪れ、人を遠ざけて望月氏と密談をとげた。その報告が如何に重大な事柄であったかは、これを聴いた望月少佐のその後の行動によって十分推察することができた。

少佐はあわただしく自から電話口に立って、諸方に電話をかけた上、夜中にもかかわらず憲兵隊の自動車を呼んで、新一と同車して、憲兵隊司令部に急行したのである。

あらかじめ電話によって所要の人員が召集されていたので、司令部での用件は二十分にして終り、二台の大型自動車が、司令部の通用門を静かに辷り出した。望月少佐と五名の部下が残らず国民服を着用して二台の自動車に分乗し、新一は案内役として、前の車に乗っていた。