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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

「やがて兄さん達の研究が完成して、試作機の製作が始まったら、わたし、その試作工場に廻してもらいます。そしてわたしの手で五十嵐先生の飛行機を造るのです。ニューヨークやワシントンを爆撃する飛行機を造るのです」

京子は身をもって兄博士の精進をうながしたのである。

移転後一ヶ月が経過した。その間、表面においてはこれという出来事もなかった。南博士達の仕事は遅々として進まなかった。五十嵐博士をうしない、その設計ノートまでも盗み去られた設計班は、羅針盤をうしなった船のごときものであった。正しい進路を採って急速に船を進めることは殆んど不可能といってもよかった。

ある日、五十嵐新一が工場を訪れた。人々が彼を歓迎したことはいうまでもない。仲間だけの晩餐会が開かれたりした。新一は数日滞在の予定であった。彼は到着の翌日、昼食後の休みの時間を、京子と二人だけで、裏山の林の中に過した。

葉の落ちつくした雑木林に、暖い陽光の降り注ぐ小春日和であった。二人はよく乾いた深い落葉を踏みながら、肩を並べて歩いた。

「僕はいつもびっくりさせられます。あなたはその手で僕の父の飛行機を造ろうとしているのですね。