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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

それが皆ほんとうだったのです。わたし、あなたのお父さまにああいうことが起るのを知って居りました。わたしの耳に誰かがそれをたびたびささやいたのです。でも、それをあなたにお知らせすることは出来ませんでした。そんなことは云えなかったのです。わたし、独りで心配して居りましたの」

「あなたは不思議な人ですね。小さい時からそういうことがあったんですってね。あなたの兄さんがいっていました。予言者みたいな奴だって」

二人は又ゆっくり歩き出していた。黙って足下を見ながら歩いた。落葉が足の下でカサカサと鳴った。一つの意味を持った大気のようなものが、二人を包んで、だんだんその密度を増して行くように感じられた。新一は永い躊躇のあとで、やっとそのことを口にした。

「京子さん、僕はさっき兄さんとあなたのことを話し合って来たのですよ。兄さんはかならずしも不賛成ではないような口ぶりでした。僕は実はそのことを話すために、わざわざやって来たんです」

京子は顔を上げないで、足下を見たまま歩いていた。歩調は少しも乱れなかった。しかし俯向いた顔が真赤になっているのを隠すことは出来なかった。

「僕は東京の母のところにいても、そのことの外は考えられなかったのです。