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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

ここの工員が何か悪さをしていたのではないかとも思いましたが、どうもそうではないのです。外から入って来たのに違いありません」

京子は息遣いせわしく囁くのであった。

「まだいるのですか」

新一は目で建物を示して囁き返した。

「エエ、いるかも知れません」

新一は京子をそこに残して、建物の表に廻り、その中へ入って行った。

巨大なる双発偵察機が一機、二機、三機、古代の怪獣のごとく唖黙って、銀色の翼を拡げていた。見上げる天井のガラス窓には、夕日の赤い色が映っているが、建物全体はもう寺院の本堂のように薄暗くなっていた。

新一は足音を忍ばせて、巨大な機体の下を歩いて行った。シーンと静まり返っている。眼界全体が霞のような夕闇に包まれている。寒気がひしひしと身に迫る。

「誰だッ」

彼は突然、立止って身構えをして怒鳴りつけた。偵察機の車輪の蔭に光っている二つの目に気づいたからである。

相手はサッと車輪の向う側に身を隠した。そしてコトコトと機体のあちらへ立ち去ってゆく足音。

「待てッ」

新一は機体をもぐって、音のする方角に突進した。

夕闇の中に国民服を着た大きな男の後姿が見える。