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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

大秘密

京子はいつもの飛白のモンペを着ていた。しっくりと足に合ったズックの靴を穿いていた。顔は昂奮に青ざめていた。その白い顔が飛白の濃紺に映えて、非常に美しく見えた。薄暗いコンクリートの背景の前に、その姿はなにかしら神々しいもののようにさえ感じられた。彼女は瞬きもせず新一の顔を見つめて、静かに階段を降りて来るのであった。

新一の目も京子の姿に釘着けになっていた。彼の表情には一層の昂奮が加わったかに見えた。その顔は京子と同じく紙のように白かった。ア、新一が待っているといったのは、もしかしたらこの京子のことではなかったのか。

それにしても長野県の大和航空機製作所に女工員として働いているはずの京子が、どうしてここに現われたのであろう。しかもこの恐ろしい捕物のさなかに、不気味な地下室へ、彼女はそもそも何の目的をもって、その美しい姿を現わしたのであろう。

大秘密

二重の地下室の冷たい空気は微動だもせず、音というものが消え失せてしまったかのごとく異様に静まり返っていた。

つい今し方まで間諜団の悪漢達が密議をこらしていた粗末なテーブルを囲んで、望月憲兵少佐、五十嵐新一青年、南京子の三人が息づまるような沈黙の中に顔を見合せていた。