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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
「お父さん、僕を疑い深いというけれど、お父さんこそ、現代の諜報技術をよく知らないのですよ。諜報技術も科学の一種です。そんなことができる筈はないと思うようなことを、技術の力で易々とやってのけるのです。不可能を可能とするのです」
新一は白い頬を少し赤らめて、熱心にいうのである。
「お父さんは、本田少将を納得させるのに一月半もかかったといいましたね。度々その人の家を訪問したのでしょう。そこには家族もいるし、雇人もいる筈です。又、お役所には給仕や小使もいます。そういう人達は、お父さんが話している席へお茶を運んだり、用事で呼ばれたりしたに違いありません。その時、何か重要な会話を小耳にはさまなかったとは云えないじゃありませんか。
立ち聞きをするという手もあります。専門のスパイなれば、その部屋のちょっと気のつかぬ場所にマイクロフォンを仕かけて、遠くから盗聴することだって出来ます」
老博士は古風な老眼鏡の中で、目をぱちくりさせた。
「フン、流石は警視庁仕込みだな。だが、仮りに日本人にそういう売国奴がいるとしてもだね。敵国への通信の途が全く断たれているじゃないか。日本で自由に生活している敵国人なんて一人もいないのだし」