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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
犯罪が行われた時、当の犯人の新一君が被害者から数十間離れた場所にいるという手品が考え出された。
事実は、五十嵐博士とソックリの姿をした人物が窓から救いを求めた時に犯罪が行われたのではない。そのとき本当の五十嵐博士はすでに傷つき倒れていたのだ。その下手人はいうまでもなく新一君である。君はあのとき博士が死んだものと誤解した。目的を果したと信じてしまった。そこで計画の通り大急ぎで庭に出て、そこに立っていた京子さんに声をかけた。むろん京子さんがそのとき庭に出ていなかったら、そして月があのように冴えていなかったら、この兇行は延期されたに違いない。庭から博士の寝室の窓がよく見えることと、庭に誰かがいることとが、絶対の条件だったからです。
それは必ずしも京子さんでなくてもよかったが、偶然にも最も都合のよい京子さんが庭に出ていた。そこで五十嵐博士夫人は京子さんに見せるために、あのお芝居を演じたのです。あらかじめ用意してあった鬘とつけ髯、博士のと同じ柄のパジャマ、博士の声を真似た嗄れた叫び声、月光がこれを助けたのです。わたしが月光の妖術といったのは、この事です。太陽の光でなくて月の光でなければならなかったのです。