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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

真の犯罪は月光の中のお芝居よりも十数分前に行われていたことを誰も知らなかった。お芝居の演じられたときに兇行があったものと信じた。そのとき新一君が犯罪現場にいなかったことは明瞭である。完全無欠のアリバイです。第一に新一君は博士の子であるということ、第二に新一君は兇行の現場にいなかったこと、一点の隙もない論理です。実に恐ろしい幻術です。

博士夫人はお芝居を演じ終ると、鬘、つけ髯、パジャマをどこかへ隠し、自ら猿轡をはめ、自分のからだにグルグルと紐をまきつけて、洋服箪笥の中に入り、内側から戸を閉めたのです。鍵は夫人がかけたのではない。新一君があとであの部屋に入ったときにかけたのです。鍵がないないと探し廻って見せたが、その実、鍵はちゃんと新一君のポケットに入っていたのです。また、夫人は自分のからだに紐をまくことは出来たけれども、その端を結ぶことは出来なかった。この欠点は、紐を解く役割を新一君が勤める事によって完全に補い得た。つまりその紐の端は一度も結ばれなかったのです。新一君はその結ばれていない紐を解いて見せた。解く真似をしたに過ぎないのです。こうして博士夫人にも完全な反証が用意されていた。