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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
「アメリカ人共は、これを聞いたら愕然として色を失うだろう。だが、日本人になった君には嬉しい知らせだ。君はお父さんに深手を負わせた。しかし殺しはしなかったのだ。新一君、安心したまえ。五十嵐博士は生きているんだぞ。そしてあの偉大な発明を殆んど完成したのだ。分るか。新一君、君のスパイとしての手柄はこれで台無しとなってしまったが、その代りに、父殺しの大罪を免れたのだ。喜びたまえ、君は君が思っている程の大罪人ではなかったのだ」
新一の瀕死の魂はこの言葉を聴き取ったのであろう。彼の土色の顔に幽かな微笑が浮かんだかと思われた。
「君は毒薬をもって五十嵐博士を殺したと信じていた。君ばかりではない、設計班の人々の全部がそれを信じた。しかし本当は博士はあの毒薬を飲まれなかったのだ。あのときわたしは博士の病室の次の間に寝ていたが、決して眠ってはいなかった。犯人の黒い手が薬瓶をすり換えたのを、隣室の暗闇の中からじっと見ていたのだ。そして、わたしは咄嗟にこの機会を逆に利用することを考えついた。
主治医の外科病院長に事情を打ちあけて協力を求めた。主治医は国家的な立場から医師としての良心を放棄し、極度に衰弱している五十嵐博士に麻酔薬を与え、外見上死人同様の状態にすることを承知してくれた。