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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

少しイライラしはじめた頃、漸くドアが開いてスチムソン長官が、四十五六歳のひどく背の高い痩せた男をともなって入って来た。両人とも背広姿であった。大統領は恭しくたたずんでいる機密局長の顔をじっと見つめた。むろん顔見知りではあるが、直接口を利いたことは殆んどなかったので、人伝ての噂以上に彼の人物を知っているとは云えなかった。痩せ細った鋼鉄のような感じの男であった。

「一時間前、機密局は例のF3号から、重大な通信を受取ったのです。そのことをオブライエン君の口から直接お耳に入れておきたいと思います」

スチムソン長官は大統領に近よって、殆んど囁くような声で云った。

「F3号というと、東京のですね」

ルーズベルトは椅子に戻りながら、やはり小声で聞き返した。全世界に散在するアメリカ諜報機関の中でも、F3号というのは特別の意味を持つ重要な人物であることを、彼はしばしば聞かされていたのである。

それから、三人は部屋の中央に鼎坐して、たとえ壁やドアに耳があっても聴き取れぬほどの小声で話しはじめた。先ず恭しく口を切ったのは機密局長オブライエンであった。

「日本の航空科学が予想以上に進歩していたことは、われわれの一驚するところですが、今日の暗号電報はさらに驚くべき事実を報じてまいりました。