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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
暗影
彼等は突然ドシンという鈍い物音を聴いた。それにつづいて、恐ろしく甲高い笑い声が爆発した。
両人はギョッとして、その方を振り向かないではいられなかった。すると、彼等のすぐうしろ、華美な絨毯の上に、大統領ルーズベルトの巨体が、ぶざまに尻餅をついている途方もない光景が眺められた。
二人は大急ぎで大統領の両脇に近づき、その巨体を抱き起そうとしたが、彼は「大丈夫、大丈夫」と大きな手を振って見せながら、てれかくしの哄笑をつづけた。足部小児麻痺によるこの失策が、おかしくておかしくて堪らないというように身もだえをし、真赤な顔になって、よく揃った大きな歯をむき出し、狂気のように笑いつづけるのであった。
暗影
五十嵐老博士の大いなる夢は、実現に向かって順調なる歩みをつづけていた。陸軍省の斡旋によって長野県上田市より程遠からぬ××温泉の裏山にある某貴族の別荘が借り入れられ、老博士を首班とする秘密設計班の人々が、その広い建物を独占していた。
老博士の助力者として航空技術本部の木本工学博士、大学助教授南工学博士の外に製図専門の技師二名、その護衛役としては老博士の子息新一青年、憲兵隊司令部から特に派遣せられた私服の下士官二人、炊事係りには、南工学博士の若い妹さんと村の娘が二人、別荘番の爺やという、合せて十二人の同勢であった。