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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

山下憲兵伍長が椅子から立ち上って、明瞭に答えた。

その時新一は既に設計室の扉を開き、室内に入っていた。すぐ後ろから父老博士が続く。

「お父さん、あれをごらんなさい。僕の想像した通りです」指さすところに、巨大な暖炉が口を開いていた。大理石の堂々たる暖炉棚、その上部の壁にはめ込みになった大鏡、明治時代に建てられたこの洋館には、古風な本格の暖炉が設けてあったのだ。だが、別に蒸気暖房が設備されて以来、この石炭暖炉は、単なる装飾の役目を勤めているに過ぎなかった。

何者の仕業か、暖炉の前に立ててあった衝立はわきにのけられ、焚口が露出していたが、その中に、板をうちつけた枠のようなものが、半ば壊れて垂れ下っているのが見えた。風よけのために、暖炉と煙突の境に取りつけてあった隔壁が、無残に踏みぬかれていたのである。

「やっぱり、あいつはこの広間へ入ったのです。昔の西洋の泥棒のように、煙突から忍び込んで、又そこから逃げ出して行ったのです」

新一のうしろから、老博士も暖炉の中を覗きこみ、新一の判断の間違いないことを確めたが、思いもよらぬ出来事に、ただあっけにとられて、暫くは茫然と立ちつくすばかりであった。