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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
曹長はその夜遅く東京に着くと、自宅に一夜を過し、翌朝は先ず憲兵隊司令部に行って、彼の任務を報告し、そこで調べられるだけは調べたが、これという手掛りを掴むこともできなかったので、直ちに警視庁に赴き、知合の外事課長を通じて、犯人の指紋の照合を依頼した。
暫らく待っていると、指紋係が一枚の指紋カードを手にして入って来た。
「ありましたよ。これです。お持ちになった写真の指紋とピッタリ一致しています」
「エッ、ありましたか」
三好曹長は案外の吉報に飛び立つ思いであった。写真と指紋カードとを受取って、拡大鏡を借りて見比べると、拇指と人差指の指紋が寸分違わず一致していることが分った。カードの住所氏名欄には「芝区××町一丁目六二番地、韮崎庄平」と記入してある。
「どんな前科があるのですか」
「ところが、前科というほどの前科はないのです。こいつは僕が指紋を採った男で、よく覚えているのですが、変な奴ですよ。マア途方もない変り種ですね」
指紋係はなぜかニヤニヤ笑いながら答えた。
「変り種というと。一つ詳しく話して下さいませんか」
「エエ、ようござんす。自分で指紋を採ったからといって、一々その人間を覚えていられるものではありませんが、こいつは、ひどく変っているので、幸い、よく記憶しているのです。