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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

いつもとはまるで様子の違う主人を、びっくりして出迎えている女中に、

「新一はいるか。ウン、いるなら、すぐわしの書斎へ来るように云ってくれ。大事な話があるからとな。いいか、すぐにだよ」

といい捨てて、着換えもせずに奥まった書斎へ急いだ。

しっかり抱えていた大きな折鞄を、ドサリと机の上に置いて、廻転椅子に腰かけたが、腰かけたかと思うと、すぐにまた立ち上って、書斎の中をグルグルと歩き廻る。歩きながら、まるで演説でもしているように、両手を顔の前で振り動かすのだ。

「お帰りなさい」

開け放しの扉の外に、二十五六歳の青年が立っていた。老紳士とは似てもつかぬ整った顔立ちの、非常に色の白い青年である。銘仙飛白の袷をキチンと着て、素足にスリッパを穿いている、その足が女のように白くて美しい。

「ウン、新一か。お前に話があるんだ。お母さんはどうしている。寝ているのか」

「エエ、まだとても起きられませんよ。もう二三日は寝かせておかなくっちゃ」

「ウン、あれの持病にも困ったもんだな。しかし、そんなことはマアどうでもいい。お前に話があるんだ。今夜は、お前に一大事を打ちあけなくちゃならん。