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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

韮崎は立って行って、部屋の一方の小型の扉を開いた。三好曹長は若し逃亡の様子が見えたら、すぐさま飛びかかる用意をしたが、そこは出入口ではなくて、戸棚のような場所であった。韮崎は、そこから長方形の木箱を持ち出して来て、卓の上に置いた。

ゆっくり蓋を開いて、その中から取出したのは、小銃のような形をしたものであった。長さは普通の小銃の半分ほどしかなくて、筒口が尺八のように心持ち開いている。もっと異様なのは、引金の辺から柔軟な金属の管が出て、木箱の中の、やはり金属製の四角な容器につながっている。

「こういうものを御覧になったことがありますか。今戦場で盛んに使われている火焔放射器ですよ。小型火焔放射器とでもいいますかね。私が自分で拵えたのです。こう見えても、私は科学者ですよ。錬金術師ですよ。この建物の中に工房があるのです。私は以前ピストルを何挺か持っていたのですが、皆警察にとり上げられてしまいました。そこで手製の玩具を拵えたというわけです。ハハハハ、お分りになりますか」

韮崎はそういって、その火焔放射器の筒口をあちこちと動かすのであった。ピンとはねた八字髭が、如何にも中世紀の錬金術師めいて似つかわしかった。