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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「ミスター・アカベーン」

と呼んだ。Akabane とある羅馬字綴りを動もすると英語読みにアカベーンとやる。その都度皆が笑う。

「先生、僕の名はアカバネです」

と赤羽君が訂正を申入れた。

「それではミスター・アカバネ」

「はい」

「君は好い話題を提供してくれました」

「…………」

「アカベーンと呼ぶと何故皆が笑いますか? その理由を教えて下さい」

「…………」

「アカベーンは木の名ですか? 石の名ですか? 或は又鳥の名ですか?」

とニコル先生は早速会話の材料に応用した。しかし赤羽君はもう上ってしまって、聞き取れない。

「何だい? 何だい?」

と日本語で私に訊いた。私も半分りだったが、

「アカベーンの説明だよ」

と智恵をつけてやった。

「アカベーン」

と赤羽君は早速目の下に指を当てゝ舌を出した。

「ミスター・アカベーン」

「日本、アカベーン」

「ミスター・アカベーン」

「日本、アカベーン」

「ミスター・アカベーン、やめなさい!」

とニコルさんは机を叩いた。憤ったのだった。

「先生」

と立花君が立ち上った。

「何ですか?」

「アカベーンについて、私の知っているところを申上げたいと思います」