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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
と怖い顔をした。
「…………」
「こゝの人は皆日本に一生涯を捧げる積りで来ているんだから、不真実な仕打をされると、気の毒なくらい失望する。ニコルさんに赤んべいを教えたのは誰だね?」
「僕です」
と赤羽君は立ち上った。
「そんな悪戯をしちゃ困るじゃないか?」
「あれは会話の時間に……」
「いや、後からで宜しい。教員室へ来て、一応ニコルさんに断りを言い給え」
「はあ」
「ニコルさんはこの間の日曜に或教会へ行って説教中、あれをジェスチュアーに応用して笑われたそうだ。生徒の言うことは信じられないって、悄げている」
「…………」
「気をつけてくれなければ困る」
と猪股先生は事情を知らないものだから、皆で瞞したように思っていた。
もう一つは佐伯君が受けた飛沫だった。或日、谷君が教室で赤羽君と出会い頭に、
「日本アカベーン」
と言って、その通りの真似をしたら、赤羽君が突如打ってかゝった。谷君は身をかわして逃げ出した。赤羽君が追っかけたら、佐伯君が遮った。
「邪魔するな」
「まあ、宜いよ」
「余計な世話を焼くと斯うだ」
と赤羽君はそこに置いてあった佐伯君のマンドリンを蹴飛ばした。佐伯君は学校の帰りに稽古に寄るので、いつも持って来る。