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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
「皆早く寝給え」
と蛇足を加えた。しかし皆はナカ/\床につかない。初めて宿屋に泊るのが嬉しくて、いつまでも噪いでいる。
「さあ、もう寝給え」
と私は再び促して、模範を示す為めに先ず床に入った。疲れていたから、直ぐにウツラウツラした。皆も喋り草臥れて寝たようだった。間もなく、
「実際此奴は生意気だ」
という声が私の夢を破った。
「校長の子だと思って好い気になっている」
「先生がおベッカを使って贔負するものだから増長している」
「学校なら兎に角、こんなところまで来て級長風を吹かせやがる」
と大勢だ。私は目を瞑っていたが、一人々々その声で分った。
「此奴の為めに僕は幾度先生に叱られているか知れない」
「僕も然うだ」
「僕だって然うだ」
「皆然うだよ」
「一体何ういう料簡だろうね?」
「馬鹿さ」
「大馬鹿だよ」
「先生に煽てられゝば山椒の木へ逆さになって登る代物だ」
「おい、早く撲ってしまおうよ」
「蒲団を被せて置いて小突けば、誰だか分らない」
「おい」
「おい」
私はもう寝ていられない。ムックリ起き直って、
「何をするんだ?」
と極めつけた。同時に国分が打ちかゝった。それが合図だった。四人に一人だから敵わない。