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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
巨大なる角柱は、ズブズブとその中へつかって行った。
ややしばらくあって、角柱は再び池からつり上げられ、今度はコンクリートの床の上に、ズッシリと安置せられた。
最早少しも疑う所はない。倭文子と茂が、どんな目にあわされたのか、明智にも、恒川氏にも、分り過ぎる程分っている。
だが、あまりといえば奇怪千万な殺人手段に、流石の警部も、茫然自失の体に見えた。
「倭文子と茂少年です」
谷山は大角柱の側によると、まるで見世物の口上でも述べる調子で、空うそぶきながら、角柱の向側で、カチカチと音をさせた。
と、巨大な亜鉛箱は、底が開いて、中味を床に残したまま、スルスルと天上して行った。
その下から現われたものは、一目見た時には、何かしら非常に美しい、キラキラと光りかがやいた、巨大な花のように感じられた。
予期はしていたものの、悪夢のように怪奇で、艶麗な光景に、両人とも「アッ」といったまま、二の句がつげなかった。
アア、何といういたましくも、美しい光景であったろう。
そこには、かつて見たこともない、ずばぬけて大きな花氷が電燈を反射して、キラキラと美しい虹を浮かべて、立っていた。