轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「助けて、助けて」
組みしかれた彼女は、絶え絶えの声で叫んだ。
「お前、茂に逢い度くないのかね。逢いたければ、おとなしくするがいいぜ」
だが、倭文子は抵抗をやめなかった。
おいつめられた鼠が、却って猫にはむかって行く、あのむごたらしい、死にもの狂いの力で、彼女は相手を突き倒そうとした。それがかなわぬと知ると、あさましいことだが、ふと口に触れた相手の指先を、思い切って、グニャッと噛みしめたまま、放さなかった。
怪物は悲鳴を上げた。
「放せ、放せ。こん畜生、さもないと……」
丁度その時、天井の方から、またしても、茂少年の、絶え入る様な泣き声が聞こえて来た。
ピシリ、ピシリ、残酷な鞭の音だ。
「打て、打て、もっと打て。餓鬼が死んでも構わねえ」
不明瞭な、ゾッとする様な、呪いのわめき声が、怪物の口からほとばしった。
「分ったか。お前が抵抗している間は、餓鬼の折檻をやめないのだ。お前の抵抗がひどければ、ひどい程、お前の子供は、死ぬ苦しみを受けるのだぞ」
そういわれては、流石に啣えている指を、放さぬ訳には行かなかった。
そして、彼女がグッタリ抵抗力を失うと、不思議なことに、上の泣き声も静まった。