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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
三谷が心配すればする程、明智は却って、ニコニコ笑って見せた。
「尾行をして来れば、寧ろ好都合ですよ。あいつのありかを捜索する手数が、省ける訳ですからね」
彼は三谷を励ます様にして、先に立って、玄関に待っていたタクシーに乗った。
青山の例の怪屋への途中、絶えずうしろの窓を注意していたけれど、尾行して来る自動車を発見することは出来なかった。
賊は彼等の行先を察して、とっくに先廻りをしているのではあるまいか。危い、危い。あの化物屋敷へ、武装もせず、たった二人で乗り込んで行くのは、あまりに向う見ずな、振舞ではなかったか。
二人は、少し手前で車を捨てて、小春日和の、晴れ渡った日をあびながら、例の怪屋へ歩いて行った。
締切った門には、警察でとりつけたのか、いかめしい錠前がぶら下っている。白日に照らし出された怪屋は、何の変てつもない、ただの空家としか見えなかった。
「鍵がなくては這入れませんね」
三谷が、錠前を見ていった。
「裏へ廻って見ましょう。賊が消えたという塀の所へ」
明智はもう、その方へ歩き出していた。
「でも、裏の方からは迚も這入れませんよ。裏門なんてありませんし、それに塀がとても高いのです」