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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

然りしこうしてその進歩をなせし所以の本を尋ぬれば、みなこれ古人の遺物、先進の賜なり。

わが日本の文明も、そのはじめは朝鮮・支那より来たり、爾来わが国人の力にて切磋琢磨、もって近世の有様に至り、洋学のごときはその源遠く宝暦年間にあり〔『蘭学事始』という版本を見るべし〕。輓近外国の交際始まりしより、西洋の説ようやく世上に行なわれ、洋学を教うる者あり、洋書を訳する者あり、天下の人心さらに方向を変じて、これがため政府をも改め、諸藩をも廃して、今日の勢いになり、重ねて文明の端を開きしも、これまた古人の遺物、先進の賜と言うべし。

右所論のごとく、古の時代より有力の人物、心身を労して世のために事をなす者少なからず。今この人物の心事を想うに、豈衣食住の饒かなるをもってみずから足れりとする者ならんや。人間交際の義務を重んじて、その志すところけだし高遠にあるなり。今の学者はこの人物より文明の遺物を受けて、まさしく進歩の先鋒に立ちたるものなれば、その進むところに極度あるべからず。今より数十の星霜を経て後の文明の世に至れば、また後人をしてわが輩の徳沢を仰ぐこと、今わが輩が古人を崇むがごとくならしめざるべからず。