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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

天井板が今にも破れそうに、メリメリと鳴った。

だが、飛びかかって行った場所には、どうしたのか相手の身体がなかった。身体はなかったけれど、頭の上の屋根の方から、二本の足がブラブラと下っているような気がした。

オヤッ、変だなと思ったけれど、ゆっくり考えている暇はない。無我夢中で、その二本の足のようなものにしがみついて行った。

すると、その足が、スーッと屋根の方へ引込んで行くような感じがしたが、次の瞬間には、それが恐ろしい勢で、グーンと下へ伸びて来た。

アッと思う間に、林助手は天井板をメリメリ云わせて、そこに転がっていた。

何が何だか分らなかった。懐中電燈は点火したまま転がっていたけれど、その異変の起った場所には直接の光が射さぬので、はっきり見定めることが出来ないのだ。

だが、忽ち事の次第が分って来た。ほのかな反射光の中に、屋根の裏側の薄い板張が見えている。その板張の一部分に、ポッカリと二尺四方程の穴があいているのだ。穴の上には何の目を遮るものもなく、遥かの彼方に、キラキラと星が光っている。

アア、何ということだ。こんなところに屋上への抜け穴が用意してあったのだ。