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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
第三の餌食
ない、恐らく何者かが工場の名を騙って納入したのであろうと主張した。そして、それには一々確かな拠り所があったので、係長もたちまち疑念をはらし、犯人の用意周到さに驚くばかりであった。
死体入りのガラス箱を陳列館に運び入れた運送店が調べられたことは云うまでもない。しかし、それも何等得る所なくして終った。やはりある運送店の名が騙られていた。それを受取った陳列館員の記憶によると、人夫は都合三人で、似たような汚らしい男であったが、中でも親分らしい送状に判を取って行った人夫は、左の目が悪いらしく、四角く畳んだガーゼに紐をつけて、そこに当てていたということであった。手掛りといえば、それが唯一の手掛りであった。
第三の餌食
最愛の雪子さんを失った川手氏の悲歎が、どれほど深いものであったかは、それから四日の後、雪子さんの葬儀の日に、あのよく肥っていた人が、げっそりと痩せて、半白の髪が、更に一層白さを増していたことによっても、十分察することが出来た。
盛んな通夜が二晩、今日は午前から邸内最後の読経と焼香が行われ、正午頃には雪子さんの骸を納めた金ピカの葬儀車が、川手家の門内に火葬場への出発を待ち構えていた。