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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
名探偵の失策
彼等は異口同音に、外からも内からも、門や塀を越えたものは決してなかったと確信に満ちて答えたのであった。
名探偵の失策
「おかしい。どうもおかしい。僕は何か忘れているんだ。脳髄の盲点という奴かも知れない。物理上の不可能はあくまで不可能だ」
博士は拳骨で、自分の頭をコツコツ殴りつけながら、川手邸の門を入ったり出たり、そうかと思うと、モーニングの裾をひるがえして、コンクリート塀のまわりを、グルグル歩き廻ったりした。
明るくなるのを待って、再び屋内屋外の捜査が繰返された。博士と助手と六人の刑事とが、夫々手分けをして、たっぷり二時間程、まるで煤掃のように、真黒になって天井裏や縁の下、庭園の隅々までも這い廻った。しかし、足跡一つ、指紋一つ発見することが出来なかった。
この事が警視庁に急報されたのは云うまでもない。忽ち全市に非常線が張られたのだが、狭い邸内でさえ、煙のように人目をくらました賊のことだ。恐らくその手配も徒労に終ることであろう。
敗軍の将宗像博士は、非常な不機嫌で、一応事務所に引上げることになった。主人の川手氏は、博士の失敗を責める力もなく、絶望と悲歎のために半病人の体であったし、博士は博士で、殊更詫びごとをいうでもなく、苦虫をかみつぶしたような顔で、簡単な挨拶をすると、小池助手を引きつれて、サッサと玄関を出