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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
この想像が、小池助手をギョッとさせた。見せびらかすことの好きな、芝居がかりの殺人鬼のことだ。或はこの想像が当っているかも知れない。妙子さんを運んだ塵芥車はすぐ近所の神社の境内に、空っぽにして捨ててあったのだ。まだ薄暗い早朝とは云え、まさか若い女を抱いて遠くまで逃げることは出来まい、どちらの方角も町続きだから、やがてはげしくなる人通りの中を、怪しまれないで逃げおおせるものではない。という風に考えて来ると、いかに突飛に見えようとも、博士の想像は、どうやら当っているらしくも思われる。
博士が木戸へ近づいて入場料を払うと、木戸番の若者は妙な笑い顔で注意を与えた。
「中で紙札を二度渡しますからね。出口で返して下さい。それが無事に通り抜けたという証拠になるのですよ。二枚揃ってなくちゃいけませんよ」
二人はそれを聞き流して木戸を入って行った。テント張りとは云え、天井はすっかり厚い黒布で蔽ってあるので、一歩場内に入ると、夜も同然の暗さであった。その薄暗い中に、見通しも利かぬ竹藪の迷路が続いているのだ。
或は右に或は左に、或は往き或は戻り、やっと人一人通れる程の細道が、何町となくつづいている。