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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

全体の面積はさほどではなくても、往きつ戻りつの道の長さは驚くばかりである。

道が分れている箇所に出ると、小池助手はどちらを選ぼうかと迷った。若し間違った道に入り込んでしまったら、いつまでもどうどう廻りをするばかりで、果しがないからである。

「君、迷路の歩き方を知っているかい。それはね、右なら右の手を、藪の垣から離さないで、どこまでも歩いて行くんだ。そうすると、仮令無駄な袋小路へ入っても、二度と同じ間違いを繰り返すことがない。出鱈目に歩くよりも、結局はずっと早く出られるのだよ」

博士は説明しながら、右手で竹藪を伝って、先に立って、グングンと歩いて行く。小池助手は、成程そういうものかなあと思いながら、そのあとを追うのである。

長い竹藪の間々には、ありとあらゆる魑魅魍魎が、ほのかな隠し電燈の光を受けて、或は横わり、或は佇み、或は蹲まり、或は空からぶら下っていた。あるものはからくり仕掛けで、ゆっくりと動いていた。古池になぞらえた水溜の中から、痩せ細った手がニューッと出て、それから徐々に、お岩のように片目のつぶれた女の幽霊が現われ、見ていると、そのまんまるに飛び出した目から、タラタラと真赤な血が、とめどもなく流れ出すという、念の入った仕掛けもあった。