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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
信長の陣へは、
(全軍、あらまし、全滅)
が伝えられた。
たった今、信長の前を去って、まだ眼の底に姿も残っている佐々隼人正政次、岩室重休、千秋加賀守らの将もみな、枕をならべて戦死したことが、嘘のように、報告されたのであった。
佐々、千秋などの率いる奇襲隊が、鳴海城の搦手を衝いて、そこの一角を破ったという合図を見たらすぐ、信長は正面から全力をもって当り、一気に鳴海を落して、敵の側面勢力を崩し、一方味方の足場とする作戦であったのである。
で、彼はもう、全軍をひきいて善照寺の山を降り、
「今にも」
と、戦機を待ちかまえていた出鼻であった。
ところへ、
「――味方は総敗れ、佐々、千秋、岩室殿にも、前後して、討死なされました」
と、引っ返して来た傷負から聞いて、彼は、いまさらのように、
「最早か」
と、思わずいった。
死の無造作。死の早さ。嘘か事実かを疑う間もないくらいだった。疾く、こうとは覚悟の前ながらその慌ただしさに、さすがに彼も胸騒いだ。
「む、むウ! そうかッ」
鐙に踏み立って、
「者どもッ」
眉は、黛で描いたように、濃く強く見えるほど、凄まじいその相好の皮膚は、冴えて、血の気も見えなかった。