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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
菊便り
信長は、三好長慶から乞いうけた「管領家家人、東国ヘ下ル者」とある往来手形を、木戸へかかるたび、所領の役人へ出して示した。
菊便り
片田舎の草屋でも、近ごろは茶をたしなむ風がさかんであった。
余りに動流の激しい、そして血なまぐさい世の中なので、その半面の「静」を求め、血ぐさい一瞬を離れて、寂の中に、息をつこうという人々の声なき求めといえるであろう。
元々これは、東山殿の贅美と退屈の果てから生れた貴族趣味のものだったのが、いつのまにか、その東山殿の足利文化を、過去の殻として、次の生々と伸びかけている草民のうちへ、極めて、平民的に、また生活に即して、日常に愛され行われるような傾向になりかけていた。
「動」の生活に対する「静」の一瞬として、この雅境を最も愛し始めたのが、怖ろしく一面に破壊的な、また血なまぐさい日常を持つ武人であり、それを見、草屋の廂の下にまで、平民化して来たのは、近頃、専らそれを業として、一流一派を称しだした茶宗の流れを汲む各地の小茶人達であった。
誰に習んだか、寧子も、その茶をひととおりはやる。
喫むのは好きな父の又右衛門があるので、独り稽古のそら箏を、垣の外ゆく人へいたずらに聴かすのとはちがって、茶をたてるにも、張合いはあるし、それに、朝のしずかな生活と、父娘の和やかなほほ笑みは、瀬戸黒の茶わん