轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
白雨・黒風
などと未だ杯をめぐらして飲んでいたのである。
が、陣中だし、夕方までに、なお大高まで前進する予定なので、誰も、酒の量をすごして、軍旅の疲れを呼び出すことは、誡めながら飲んではいた。
そのうちに、
「飯が炊げましたが」
と、兵站部の雑兵が来ていう。そうだ、もはや殿へも御膳をさし上げろと、幕将たちも杯を納め、運ばれて来た兵糧米の炊きたてと、大きな汁鍋とを席に見た頃、
ぽつ! ぽつ!
ぽつ! ……
と、鍋へも飯籠へも、また、莚にも、各※(二の字点、1-2-22)の鎧にも、大きく音を立てて落ちて来た雨の光に、
「やあ、これは」
と、険しい空の形相に気がついて、ようやく莚の位置をかえ始めたのだった。
そこの幕中に、幹の太さ三抱えもある楠の大木があった。義元は、雨をも忌って、梢の下へ寄った。
「ここならば――」
と、後から、人々は義元の敷物やら膳部を、あわててそこへ移して行ったが、楠の巨木は根土をゆるがして、烈風の中に吼えていた。病葉も若葉も、塵のように舞って、人々の鎧へ吹きつけて来るし、炊事している兵站部の、薪のけむりが風圧のために地を低く這って、さなきだに息づまっている義元や幕将たちの眼や鼻をついて来るのだった。