轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

胸が動悸するのだった。婚礼の杯をするまでは、そんな心地は覚えない人であったのに、ゆうべからは藤吉郎の顔へ眸も向けられなかった。

「……おはいり」

藤吉郎はいう。

寧子の耳には、まだ起きて話している両親の声が聞える。立ち迷うている間にふと縁先の蚊遣りの燃え残っているのが眼についた。彼女は蚊遣りの器を持って、

「そんな所にお休みでございましたか。蚊がおりましょうに」

と、恟々はいった。

床莚へじかに寝ていたのであった。藤吉郎はむっくり起きて、

「アア蚊か。なるほどいる」

「おつかれになりましたろう」

「そなたこそ」

宥って――

「縁者どもはしきりと辞退しぬいていたが、まさか、眼上の年老ったお方達を下部屋へ寝かせて、そなたとわしが金屏のうちにもやすめまい。無理に子連れの小母や御老人などをあれへお寝かし申したのだ」

「……でも、夜の具も召さずに、そんな所でお横になっていらっしゃると」

「大丈夫」

立ちかける寧子を止めて、

「わしの体は地へも寝たし、板床にも、貧しいには鍛えられている――」

と、すこし膝を正して坐り直した。

「寧子、もすこし前へ」

「……は。……はい」

「いうておこう。