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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

びっくりしたように蘭丸は顔から肱をはなした。信長は坐り直して、

「生きている」

強くうなずいて見せた。

「どこに……どこに父は、生きておりますか」

蘭丸は手をついて、顫きながら、主君の唇もとを見つめた。

信長は、自分の胸へ、手をあてながら、

「ここにだ。信長の胸にだ。――生きているというたのは、そちの父の形ではない。討死しても、可成の忠魂は、信長の胸に生きていると申すのだ」

「ど、どうしてですか」

「可成ばかりではない。信長の軍について、今日まで、諸処の合戦で死んだ者も、みな信長の胸に合祀してある。それが信長の心となって、艱苦にぶつかるたびに、信長を勇気づけてくれる。怯む心や惑う心のうごくたび、わしが幼年の頃、わしを忠諫して自害した平手政秀をはじめ、そのほかたくさんな忠魂が、わしを叱咤し、わしを善に善にと導いてくれる。そちの父三左衛門可成も、そのひとりじゃ。そちが悲しむと、信長の心もかなしむ。――見よ、わしはなお、無数のよい将士を死なすだろう。かなしんでいては出来ないのだ」

噛んでふくめるようなことばになる。生来、利発な蘭丸は、凝然と坐りなおしていた。

「……だが、信長はそちにも誓う。