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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
母の戦い
妻のお市の方とのあいだに、もう四人の子を生しているが、その妻もまた二十三、四。彼もまだ三十には一つ欠ける。
ひろい小谷の地を三分して、一劃ごとに一城を築き、長政はその三の曲輪にたて籠っていた。小谷城とは、三城あわせた総称である。
たそがれ頃まで、南の狭間で小銃の音がかなり烈しく聞えていた。時折、格天井もゆすれるような大鉄砲の音が交じる。
「オオ……」
お市の方は、怯えたひとみを、思わずあげて、ひしと、ふところの児を抱きしめた。
まだ乳の離れない達姫であった。
風もないのに、煤を吐いて、ゆらゆらと火色の変じる短檠のあかりを見て、
「……怖いッ」
「おかあ様」
と、右のたもとへ、次女の初姫がすがると、ひだりの膝へも、長女の茶々が、だまって、しがみついた。
さすがに、もうひとりは男だけに、まだ小さいが、母の膝へは来ない。側仕えの侍女をあいてに、棒などをふり廻していた。長政の嫡子、万寿丸だった。
「見せてよ。いくさを見せてえ」
万寿は、だだをこねていた。侍女を、鏃のない矢柄で打っているのだった。
「……万寿。なぜ召使を打ちますか。戦は、お父さまがなされています。